はやり目(流行性角結膜炎)の治療が進歩する!?

この前も書いた、サンヨード という 唯一無二の、消毒薬の点眼が市販薬として発売されました。

サンヨードの講演会をウェブ視聴しました。

流行り目(はやりめ=流行性角結膜炎)って何かって簡単に説明すると、

アデノウィルスによる、とてもうつされたり、うつしたりしやすい流行性の結膜炎・角膜炎です。

アデノウィルスは乾燥にも強く、感染者の涙を触った手で触れたものは1週間ほど感染力があると言われています。アルコール消毒でも完璧には消毒しきれません。はやり目は、(初期のコロナのように)1週間ほどの潜伏期間があります。

アデノウィルスにもいろんな種類があるのですが、近年日本では、54型が最も多いそうで、角膜にもダメージを与えます。

スワンでアデノウィルスの検査をしても何型かまでは特定できませんが、症状の重い、はやり目の患者さんにしばしば遭遇します。54型だったのかもしれません。

角膜糸状物や偽膜を伴うような症状の強い、流行り目の患者さんは、開業するまであまり経験したことがなく、角膜のエキスパート、北1条田川眼科の田川義継先生に治療をお願いしたりしていました。

最近はほとんど、スワンで治療できています。

症状の強い患者さんは、発症後 4・5日くらいで「目が痛い・見えづらい」などの症状で再来され、診察すると、結膜に偽膜という黄白色の膜がはっていて、糸状角膜炎という、角膜から短い糸のようなものが垂れ下がっていることが多いです。

偽膜も糸状の物質もとても感染性があるので、できるだけの感染対策をしながら、できるだけしっかり、取り除いてあげることが重要と経験的にも知りました。局所麻酔はしますが、膜を取り除いたり、角膜を磨く処置は患者さんはつらそうです(とると痛みは楽になることが多いですが)。

偽膜を取り除いても数日後にまた、偽膜が張ってくるので、落ち着くまで 2・3回膜の除去を繰り返すことが多いです。

アデノウィルス54型は MSI(multiple subepitherial corneal infiltrates:多発性角膜上皮下浸潤)という角膜の濁りを残してしまい、場合によっては流行り目の後遺症的に視力低下が残ってしまうこともあります。

これは、個人的な見解ですが、発症早期からステロイド点眼と軟膏を入れつつ、偽膜を見つける度にできるだけ除去することを心がけることにより、それほど濁りを残さずに済むのかも、と思っています。濁りの強いMSIは幸いなことに、まだ、経験していません。

さて、先日のサンヨード(ヨードの消毒液を点眼にしたもの)のウェブ講演会では、ちょっと 症例数は少ない(大変失礼)ですが、発症早期にサンヨードを点眼すると、今まで普通の眼科医が処方していた点眼2種類を使う場合より MSIが半分以下になったそうです。

他の専門家の先生方も「発症後できるだけ早期に」、サンヨードを点眼することが有用であることをおっしゃっていました。

サンヨードで偽膜の発生の予防も期待できるでしょう。消毒薬なので、家庭内で感染を広げてしまうリスクも低減できます。画期的かもしれません。コロナの結膜炎にも効果期待して良いでしょう。

眼科感染症学会の頭の良い先生方が10年前から「つくりたい」と言って、ようやく世に出るようになったのが、今年、ということです。作ってくれる製薬会社をいくつかあたったみたいですが、(儲からないから)参天製薬だけが、市販薬として作るってことになったみたいです。

今考えている私の治療方針は、

アデノウィルス核結膜炎と診断

→ 今も行っている標準治療の点眼処方 + サンヨードを薬局で購入してすぐ点眼することを推奨。

かつ、一緒にお住まいの方も発症したらすぐに点眼できるようにサンヨードを購入しておく(潜伏期間1週間あるので、既に感染している可能性あり)ことを推奨。発症したら点眼しながらできるだけご予約の上、受診して、ウィルスの検査を受けてください、とお伝えする。

サンヨードの有効期限は希釈後3日間とされていますが、現実的には1週間までは可とするのが現実的だろうと思います。

サンヨードを点眼するベストな期間は定まっていないが エキスパートの先生の意見を総合すると 発症3日だけでは不十分、1〜2週間必要だろう、という感じのようです。ただ、サンヨードは 要指導医薬品 ということで、一回一本、 まとめ買い、まとめ売りできない、対面での販売 となっているため、3日ごとに薬局に一人一人が購入のために外出するとなると交通費も時間も大変(全ての薬局においていあるわけではなかろうと思います)だし、感染拡大のリスクもある、というところが、今のところの矛盾点です。

ちなみに講演では「なぜ有効期間が3日しかないのか?」という質問があり、「希釈すると活性がどんどん落ちてゆくが、工夫することにより3日間もつように製薬会社が頑張った」旨でした。確かに、手術の場面では3日前に薄めて作った消毒薬を使うことは絶対にありませんからね。。。

要指導医薬品というカテゴリーがどれほどのものなのか、私は知りませんが、市販薬なので、このブログを見て、もし、「買いたい」と思って薬局に行ったら、多分売ってくれるんじゃあないでしょうか。

対面販売、一人一本だそうです。必要な人に買ってもらえることができなくなるといけないので、いきなり転売目的に買わないようにお願いします。

あと、めっちゃ、しみますけどね。あと、服についたら、なかなか取れないので、すぐ中性洗剤などで洗うことです。あと、作る時に失敗してこぼしてしまっても自己責任です。

あと、流行り目になった時は特に、目薬する前と後に手を洗うことと、溢れた分はそっとティッシュなどで拭いて、捨ててしまうことがとても重要です。涙で感染しますから。

コロナの抗原検査キットのように、お守りがわりに持っておくと良いかもしれません。私のように、流行り目に絶対に感染したくない、感染してもできるだけ早く治したいという方は、シナモンドーナツのように「見つけたら買い」かも!?

案件ではありません。

あと、家族で使い回しは、絶対にいけません。感染していなかった場合でも、汚染された点眼瓶を介して感染が広がる可能性があるからです。

医師として推奨することはできませんが、1ヶ月前に希釈したサンヨードを自己責任で点眼してみました。消毒液なのだから腐ることはあるまいし、まつ毛や目に触れずに清潔に点眼できている自負がある、という自己判断に基づきます。

「納豆はもともと腐っているのだから賞味期限は無視」という感じでズボラに生きている、私の個人の責任と判断です。

どんな感じだろうと人柱になってみました。点眼の液の様子は特に変わらないようです。さし心地も相変わらず染みますが、気持ち、作りたてよりしみなくなったように感じたのは活性が落ちたから? あと、やっぱり、点眼後10分くらい経ちましたが、まだ、シパシパ感が続いています。