ハードコンタクトレンズは円錐角膜の予防になる?
2023年7月8日に大阪で聴講した、コンタクトレンズ学会の講演のアウトプットとスワンにおける円錐角膜の検査と治療方針について述べます。
Vishal Jhanji 先生 (ピッツバーグ大学) による円錐角膜関連の講演を聴講しました。
円錐角膜は早期発見し、早期に角膜クロスリンキングを行うことにより、治療可能になりつつある、不正乱視を生じる角膜の病気です。重症になると角膜移植が必要になるので、診断確定すれば20歳代前半くらいまでに角膜クロスリンキングを施行するべきだと思います。(まだ、当院から紹介して角膜クロスリンキングを施行してもらった例はありませんが)
今回の演者の先生は「利益相反なし」で、角膜クロスリンキングの有用性を述べられていた(英語での講演だったので、今一つ自信がありませんが多分あっていると思います。以下同様)ので、本当に有効な治療なのだと思います。残念ながら、いまだに本邦では保険適応になっていません。
さて、表題にしたハードコンタクトレンズ装用による円錐角膜の進行抑制効果の有無についてです。
「(特殊レンズでない)ハードコンタクトレンズに円錐角膜の進行抑制効果があると、80%くらいの眼科医が考えているがどう思うか?」と 質問された先生がいらっしゃいました。Jhanji先生の回答は「ハードコンタクトレンズで見え方は改善するが、角膜の形が変化してゆこうとするのを抑える効果はないと思う」
とのことでした。
円錐角膜は早いと小学生でも発症します。幸い、30歳代半ばくらいでは自然と進行が停止する(体が硬くなるように角膜も硬くなるから)ので、軽症では乱視用の眼鏡やコンタクトレンズを使用することにより、特に困っていない方も少なくありません。しかしながら、角膜移植をせざるを得なくなるような重症例は、予防できるなら、それに越したことはないのです。
スワンでは視力検査を受けたことがない患者さんが受診されたら、その時には受けられなくても、遠くないうちに視力検査を受けていただくことをお勧めしています。子供でも視力検査ができるようになれば(3歳以上くらい)、できるだけ受けてもらうようにしています。
ケラトメーターで円錐角膜指数(KKI)が高い場合や、急に乱視や近視が進行してきている子供の場合、病状に応じて3ヶ月〜1年の間隔で角膜形状解析と定期的な視力検査・眼軸長の測定などで進行のスピードや角膜形状の変化を見て進行リスクを判断します。
子供の場合、「ハードコンタクトレンズをせざるを得ない状況までに進行する前に円錐角膜を発見する!」という思いで診療しています。
30歳代後半以降のコンタクトレンズユーザーの方で、円錐角膜や強い角膜乱視によりソフトコンタクトレンズで視力改善がえられない場合は、ハードコンタクトレンズをお勧めすることがあります。ハードコンタクトレンズ合わせは、現在は1ヶ月に2日、予約制で行っています。円錐角膜用に工夫されたハードコンタクトレンズは、普通のハードコンタクトレンズよりも異物感が軽減し、見え方が良くなることが期待できますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。