老視の点眼治療

個人的には いわゆる老眼を治療できる目薬はないと思っています。最も効果が期待できるのはアスタキサンの内服(サプリメント)です。ピント調節力を3〜4割向上させることが確認されています。

老視の点眼治療として、アメリカでは  0.4%〜2% のピロカルピン点眼 が使われているそうです。ピロカルピン点眼は、当院でもSLT緑内障レーザー治療の前処置や、医原性の緑内障発作対応のために、使用頻度は少ない点眼ですが、少量在庫しています。木村は老視治療に処方したことはありません。

ピロカルピン点眼は、黒目を小さくすること(縮瞳)によるピンポール効果で近くのものが一時的に見えるようになるかもしれませんが、根本治療にはなりません。黒目が小さくなって、目に取り込むことができる光が少なくなると、サリン中毒の時のように、昼間でも暗く見えるようになりますから、夜の運転などは特に、見えなくて、とても危険だと個人的には思います。ピンホール効果による老視治療として、角膜内に インレイ を挿入する手術が、かつてありました。その手術が廃れたことからも、ピロカルピン点眼による老視治療も、あまり期待できる治療ではないのではないかな、と木村は懐疑的にみています。

白内障治療薬として処方している、ピレノキシン点眼に老視進行抑制効果があるとの報告もあります。しかしながら、すでに生じている老視を改善させる効果はないでしょうから、「老眼が治った!」などと感じることは決してないと思います。一応、健康保険の適応(老視には適応ありませんが、白内障には適応あり)になっていますし、副作用はほぼないので、条件を満たす患者さんには処方してみてもよかろうかと思いますが、あまり期待を持たせることは言えません。