緑内障レーザー治療 SLT について  ミーティングに参加してきました

札幌及び近郊で緑内障レーザー治療をしている眼科医のミーティングに参加してきました。有益でした。

私は「今まで3人に1人ほど治療が効かない患者さんがいますし、レーザーしてみるまで効く体質かどうかわかりません。保険適応ですが、1回あたりの治療費は3割負担の方で片目で3万円ほどです。」

と控えめに、患者さんに説明してきていましたが、今後は

「2割ほどの患者さんには効果がありません。治療効果が得られるかどうかを推定するためには、リスパジル点眼(木村の感覚では、充血やアレルギーが生じる率は少々高めで、眼圧下降作用はマイルドな印象の緑内障点眼です。)を使用してみる方法があり、リスパジル点眼で、効果がある方であれば、緑内障レーザー治療SLTも効果が期待できるようです。日帰り手術がおりる生命保険に加入している場合は、保険金が受け取れるようですので保険会社に確認しておくと良いでしょう。当院の緑内障レーザー治療SLTの時の領収書は絶対に捨てないようにしておいて下さい。」

と説明するように修正したいと思います。正しく診断して、当てるべき場所にレーザーを当てて、当ててはいけないところには当てないようにすることが重要で、忠実にこれを行うことにより、複数の演者の先生の講演でしたが、治療効果なしの割合は2割ほどのようです。

リスパジル点眼とSLT関連で以下の報告が見つかりました。

https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1410212269

「すでにSLTを行ったことがある場合は、リスパジル点眼が効かない。SLTをしたことがない場合はリスパジル点眼が効いて、眼圧が下降する。」ということです。SLTで眼圧が下がるメカニズムはよくわかっていないのですが、どうやらリスパジル点眼と緑内障レーザー治療SLTが標的とするところが同じで、治療標的がなくなってしまうと、緑内障レーザー治療もリスパジル点眼も効かなくなってしまうと、理解できそうです。

とてもたくさん、緑内障レーザー治療SLTを行っている施設においてですら、複数回SLTだけで経過をみることができる症例は少数のようで、同じ眼に4回照射している症例は非常に少ないようです。治療標的がなくなってしまうのかも知れません。

SLTは、繰り返し行うことができる治療、という位置付けで説明がなされますが、実際の臨床では効果が永遠に持続することはなく、中長期的には眼圧が上昇してきて点眼の追加が必要になったり手術治療が必要になるケースも多いようです。

スワン アイ クリニック での症例では、SLTを始めてから、1年半と観察期間が短いからということもありますが、SLT後に緑内障手術を紹介したり、緑内障点眼を追加したりした患者さんは、今のところは、5%もいないというところです。ですが、進行した緑内障症例に、SLTでねばってしまう間に、緑内障手術紹介のタイミングが遅れてしまい、失明してしまう、ということは絶対に避けなければならないことは、肝に銘じたいと思います。

緑内障は超慢性疾患ですので、当院でのSLTを受けた患者様が、今後、どうなるか、継続的にフォローアップしないと、なんとも言えないところではあります。スワンでの12年間の緑内障治療経験で、緑内障点眼のわずらわしさや、点眼アレルギー の問題は決して小さくないので、個人的にも早期の緑内障レーザー治療の効果に期待しています。EUではSLTは緑内障点眼治療と同じレベルの位置付け、イギリスでは点眼治療よりもSLTを優先するなど、世界的には、「治療標的がなくなる前に、早めにSLTを行うのが効果的」という流れのようです。おそらく、国ごとの健康保険制度と医療へのアクセスしやすさも、国がどの治療を推奨するか、の方針に少なからずかかわっているのかとは想像します(イギリスはSLTを奨励する代わりに緑内障点眼を制限することによって、国全体の医療費のコスパがよくなると考えているかも?)

閉塞隅角緑内障は 通常、適応ではありませんが、「慎重に行っても良い。SLTレーザー治療の効果は高い。」という考えの国もあるそうです。

復習ですが、緑内障レーザー治療SLTを絶対にやってはいけない疾患として、活動性の炎症がある2次性緑内障、血管新生緑内障があります。

ただし、緑内障レーザー治療が効果的な 「ステイロイド緑内障」 と 「ぶどう膜炎に伴う緑内障 の炎症が消えている時」は見分けが難しいので、診断に迷う時に「通常の照射数の半分で治療してみて、反応を見てから、追加する」という方法もあるようです。当院では、長く、緑内障の経過を見ている患者さんにSLTを提案することがほとんどですのでぶどう膜炎緑内障の患者さんに誤ってSLTをしてしまう可能性は低いかな、と思いますが、炎症が見られない、ぶどう膜炎緑内障もあり得るようですので、油断できません。ミーティングでは、「SLT前の検査では全く炎症がなかったのにも関わらず、SLT後、眼圧上昇をきたしてしまって、後から実は、ぶどう膜炎緑内障だった、ということが判明した症例」が提示されていました。

閉塞隅角緑内障の場合、根本治療は白内障手術です。線維柱帯という、レーザーを当てるべき場所が見えづらいので閉塞隅角と称するわけで、レーザーを安全に当てることができない場所に、無理に照射しないことが肝要です。レーザーが虹彩にあたって癒着ができてしまう合併症の提示も、講演の中でありました。スワンでは、やはり、基本的には閉塞隅角はSLT適応にしない方針です。

SLTとは関係ありませんが、ソシュンドウの野平先生のまぶたの手術の技術には、まぶたの手術に造詣の深い眼科医も、一目おかれているようで、まぶた手術を得意にしている眼科医も症例によっては手術依頼をすることがあるくらいのレベルの高さのようです。こんな情報を得ることができるのも、オンラインではない対面の講演会の良さでもあります。微妙に専門が異なる部分もあるようです。近いこともあり、当院からは、コンタクトレンズによる、眼瞼下垂や、逆さまつげの治療をよく、ご依頼していました。

ソシュンドウさんは、当院の隣の新しいビルに移転されるようです。

スワンは15番出口なのでお隣のビルです。