アトピー性皮膚炎の新しい治療薬と眼科

アトピー性皮膚炎でまぶたがダメージを受けていると、目をこすってしまうことにより、外傷性白内障、目の感染症、乱視がひどく進行してしまう円錐角膜を引き起こすリスクがあがるので、アトピー性皮膚炎の治療は眼科にとってももちろん大切です。

アトピー性皮膚炎の新しい治療薬である、デュピルマブ(商品名 デュピクセント)という注射と、バリシチニブ(商品名 オルミエント)という内服薬が登場していることをアップデートセミナーで知りました。

デュピルマブ も バリシチニブ もエビデンスレベルA、ということなので、よく効く注射、内服薬のようです。

デュピルマブは皮下注射で中等症以上のアトピー性皮膚炎に使用され、インターロイキン4というサイトカイン(IL-4)をブロックすることにより治療効果をあらわします。当初、副作用も少ないと期待されていたようですが、IL-4は目の粘液を出すのに関わっているため、結膜炎やドライアイ(写真を見ると重症感のある結膜炎でした)を生じることがあるので、眼科医としても知っておかねばならないですね(知りませんでしたが)。

〇〇マブ、とか△△ニブ という薬剤は分子標的薬とか生物学的製剤とか呼ばれるカテゴリーの薬剤で、開発費が膨大だからでしょうが、お値段も高額で、デュピルマブ は お薬代だけで初回が35,765円、2回目17,633 円 で 2週間ごとに注射することになっているようです。健康保険の適応ですが、1〜3割負担としても結構なお値段になります。しかも、中断、再開は抗体形成のためすすめられない、とのことです。

話が脇道にそれますが、私が使用経験がある分子標的薬は 眼球に注射する ラニビズマブ(商品名は ルセンティス、 今でも使用) と ベバシズマブ (今はどこの眼科医も使っていない 13年前くらいに使用)です。ラニビズマブは1回の注射のお薬代が、11万円くらい(別途再診療・手技料・注射後の点眼 その他の費用がかかります)、保険適応です。疾患や病状にもよりますが、複数回注射が必要となることがほとんどです。分子標的薬はよく効き、他に代わるほどの効果が即効性を持って得られる治療法がなかなかないため、医療経済的な問題があります。

バリシチニブの話に戻ります。バリシチニブ(商品名 オルミエント)はヤヌスキナーゼ(JAK)という炎症と免疫に関わる物質(すごくざっくり。 詳細はよく知りません)を抑えることにより効果を表し、顔面の中等症以上のアトピー性皮膚炎に使用されるそうです。ただ、正常免疫も抑えてしまうので感染症の定期チェックが必要とのことです。肺炎とか結核が悪化することがあり要注意だそうです。お薬代は2mgが1錠の価格で2705.9円、4mgは5274.9円 で一日一回内服することになっているようです。やはり、1回内服するだけで完治する、というお薬ではないので継続使用するのだと思いますが、こちらは、デュピルマブと違って、治療中断できるようです。

最後に、スワン アイ クリニック では まぶたのアトピー性皮膚炎に対して、デュピルマブの注射もバリシチニブの内服も今の所、処方していません。バリシチニブの内服は勉強しながら、必要に応じて皮膚科や内科の先生と情報交換しながら、恐る恐る処方するようになるかもしれませんが、当院で治療しているまぶたのアトピー性皮膚炎の患者さんは点眼や眼軟膏や一部、プロトピック軟膏でコントロールできているかたが大部分です。もちろん、私の守備範囲を超えると思われれば、すぐに皮膚科や総合病院の受診をするように患者さんにお話ししています。