コンタクトレンズしたままの点眼について
「コンタクトレンズの上から点眼をして良いのか」という質問を時々受けます。
ハードコンタクトレンズに関しては、原則、全ての点眼薬を、コンタクトレンズの上から点眼してOKです。
ソフトコンタクトレンズは、「点眼薬と病状によってはコンタクトレンズをしたまま点眼して良い」です。
ただし、眼科医によって回答が一定しないし、私自身の考え方も変わってきているところがあるので、この、シンプルな質問である「コンタクトレンズの上から点眼をして良いのか、いけないのか問題」がややこしくなっていると思います。
ハードコンタクトレンズの上から点眼するのは、原則、問題ありません。
しかしながら、ハードコンタクトレンズをしたまま、誤って寝る前の緑内障点眼をして、寝落ちしてしまわないようにしてください(普通は寝る直前までに外しているとは思いますが)。また、ハードコンタクトレンズを使用したまま、緑内障点眼をして承認データを得ているものはないかと思います。ハードコンタクトレンズをしたまま緑内障の点眼をした後に、薬剤の眼内の濃度がどうなるかはわからないですし。緑内障の点眼はしっかり、確実に目薬の効果を得たいので、ハードコンタクトレンズの場合でも、外して点眼してもらうように指導しています。
「寝坊した、ハードコンタクトレンズをつけた、よし、出勤だ。あ、朝の緑内障の目薬忘れた、外す時間ない、目を10分も閉じている時間ない。」というときはとりあえず、緑内障点眼をコンタクトレンズの上からでも点眼することを優先してもらうように、私は指導しています。
コンタクトレンズユーザーの大部分はソフトコンタクトレンズを使用しています。
ソフトコンタクトレンズユーザーの方は「防腐剤が入っていない点眼薬であれば、原則、コンタクトレンズの上から点眼して良いです。ただし、コンタクトレンズを使用してる方で、目の乾きや痒み、異物感、目脂が多くなっているなどの症状がある場合は、そもそもコンタクトレンズが原因の眼疾患が生じている可能性があるので、コンタクトレンズをまず外して、コンタクトレンズを一定期間お休みしてください。外した上で点眼するのが基本です。」と私は説明しています。(ここまで丁寧に説明できること実際は少ないですが・・・)
ソフトコンタクトレンズの中でも、最長2週間で定期交換するタイプの使い捨てコンタクトレンズを使用している方が多いでしょう。使用経験のある方はわかると思いますが、コンタクトレンズは、毎日ていねいにケアしたとしてもだんだん汚れが蓄積してますので、開封直後に比べると、日にちが経過するにつれて、つけごこちが悪くなってきます。
コンタクトレンズの性能も向上してきています。汚れにくく、乾きにくい とされる 「フレッシュビューS 」という2週間タイプのソフトコンタクトレンズを当院ではおすすめしています。しかし、それでもなお、開封したてのフレッシュさは徐々に失われてきます。患者さんにおすすめできるコンタクトレンズかどうか判断するために、スワン で購入できる全てのソフトコンタクトレンズは私と職員が、試しに装用して、一定期間使用して問題ないかどうか、付け心地、取り回しを含めて確認しています。個人的には、年中アレルギー点眼を手放せないアレルギー体質であることもあり、「フレッシュビュー S」でもやはり、最長で2週間が限界と感じています。最初の数日は特に快適ですが、私は1週間過ぎたくらいから、「使えるけど、ちょっと苦しくなってきたかな」という感想です。
「コンタクトレンズの上から点眼して良いかどうか」という点に戻ります。
点眼薬には、通常、防腐剤が入っています(1日つかい切りタイプの小分けになっている小さなユニットドーすの点眼は防腐剤無添加)。これによって、「開封後4週間使用して良い」ということになっています。
防腐剤としてよく用いられている、塩化ベンザルコニウム(BAK)はソフトコンタクトレンズに吸着して、角膜に傷をつけることがあるので、「ソフトコンタクトレンズを使用したまま点眼しないこと」となっています。2週間タイプのコンタクトレンズは1日使い捨てのコンタクトレンズよりも、防腐剤が蓄積すると考えられるので、防腐剤として塩化ベンザルコニウムが入っている点眼薬を、2週間タイプのコンタクトレンズの上から点眼することは避けるべきと考えます。1日使い捨てのコンタクトレンズであれば、防腐剤が吸着しても1日で取り替えるので、防腐剤の影響は2週間タイプに比べ軽いです。
塩化ベンザルコニウム(BAK)が防腐剤として使用されていない点眼薬でも、グルコン酸クロルヘキシジンかエデト酸ナトリウムかホウ酸かその他の成分が、防腐剤効果のために入っています。
では、「塩化ベンザルコニウム(BAK)以外の防腐剤は点眼剤に入っていていても、ソフトコンタクトレンズの上から点眼しても問題ないのか」
という疑問が湧きますが、私の知る限り、「多分大丈夫。」と判断している眼科医が多いと思います。
塩化ベンザルコニウムが入っている点眼薬も、その濃度を薄くするなどの改良がなされているからか、角膜に傷を作ることも以前より少なくなっているように感じています。塩化ベンザルコニウムは防腐剤としては優れているそうなので、全てが他の防腐剤に置き換わることはないかと思います。
コンタクトレンズの上から点眼をすることによって起きる変化としては、「点眼薬がコンタクトレンズを膨張させたり収縮させたりするので、コンタクトレンズのカーブが変わって付け心地が変わる」ということがあるそうです。どの点眼とコンタクトレンズの組み合わせでどのような変化が起きるか、を全て把握している眼科医は皆無なので、実際は点眼してみないとわからない、というところがあるかと思います。
異変を感じたら、コンタクトレンズの使用を一旦お休みして、メガネをして眼科にかかっていただくのが最善です。
とはいえ、点眼すると症状が改善するとわかっているのに、コンタクトレンズを使用しているから点眼できない、というのはつらかろうと思います。「コンタクトレンズをしていて、目が痒い、手を洗ってコンタクトレンズを外すことなど今はできない、今すぐなんとかしたい」ということもこれからの時期は多いかと思います。そんな時は、点眼することにより、症状を緩和できるメリットの方が大きいので、花粉症で1年のうち数ヶ月だけ症状がつらい、という方は、できれば眼科で処方されたアレルギーの点眼をやむをえずコンタクトレンズの上から使用してしのいでください。症状が重い「かも」と思った段階で早めにコンタクトレンズを完全にお休みして、改善しない場合は眼科を受診しましょう。
基本は、花粉症の目の症状が強い方は、その時期はできるだけコンタクトレンズは使用しないで欲しいのが眼科医の立場です。花粉がコンタクトレンズに吸着して症状を悪化させますので。でも、雪がとけて、コロナも終わって、あたたかくなってくるこの時期、コンタクトレンズして、花見に行きたい時だってありますよね・・・